おはこんばんちは、おーわ(@mof_mof08)です。
日本各地では年間を通じてたくさんの花火が打ち上がります。
そんな美しい花火をぜひとも写真撮影してみたいという方もたくさんいらっしゃるかと思う一方で…
- なんだかすごく難しそう
- 思ったような綺麗な写真が撮影できない
と感じている方も少なからずいらっしゃるかなと思います。
今回はそんな美しく魅力あふれる花火の撮り方について、全6回の講座形式でお届けしていきます。
第2回は花火写真の撮影における基本的なカメラのセッティング方法、構図、カメラの設定(露出など)について解説していきます。
花火写真の撮影におけるカメラのセッティング
撮影する場所を決めたらカメラのセッティングをしていきましょう。
セッティングに際して押さえておきたいポイントとしては以下の通りです。
- 三脚の高さは目線を目安にする(特に会場内で撮影する場合)
- カメラの向き・アングルは打ち上げ場所に合わせて調整する
- カメラが水平になるように調整する
- 三脚の設置は足場が安定した場所を選ぶ
- ピント合わせは花火筒か付近のオブジェクトを活用する
- 明るいうちにセッティングを行う

特に花火大会の会場内で撮影する場合、他の観覧者に対して配慮するようにしましょう。
三脚の高さは目線を目安にする
三脚の高さは座った状態でカメラが目線の高さに来るぐらいを目安に調整します。(カメラマン席や会場外など立位でも問題ない場所においてはこの限りではない)
花火大会というのは何も写真を撮影する方々のためだけに開催されているわけではありません。
特に大勢の観覧客が一堂に集まる場所の前列で三脚を目いっぱい脚を伸ばした状態で撮影しようものなら、他の観覧客の方々の迷惑となるだけでなくトラブルの原因にもつながりかねません。
あくまでも花火を撮らせていただくという心構えで、三脚の高さには配慮するようにしましょう。
折り畳み椅子を使う場合は周囲の方々の迷惑とならないように配慮するようにしましょう。
会場内では折り畳み椅子の利用そのものが制限されている場合もありますので、その際は現地の指示に従うようにしてください。
カメラの向き・アングルは打ち上げ場所に合わせて調整する
カメラの向きやアングルは打ち上げ場所に合わせて調整するようにしましょう。
向きおよびアングルを決める際のポイントとしては…
- 花火の打ち上げ場所
- 打ち上げ幅
- プログラム構成
- 副題の割合
あたりを総合的に判断した上で、追い込んでいくとよろしいかと思います。
たとえば、ワイドスターマインとそれをながめる人々が一体となったシーンを撮影するのであれば…
- 花火全体が左右バランスよく入るように向きを調整する
- 客席の一部が入るようにアングルを調整する
といった感じでカメラの向きとアングルを決めていきましょう。(このあたりは第1回 撮影の準備で触れたように写真で伝えることを軸にすると決めやすいです)

カメラの向きとアングルをしっかりと整えることで、より綺麗な花火写真へとつながっていきます。
ただ、実際に現地でカメラをセッティングをしていただくと分かるかと思いますが、撮影および花火観賞に慣れていないと一発で向きやアングルを合わせるのは非常に難しいものです。
カメラの向きと角度をバシッと合わせるのが難しいという場合は、撮影しながら微調整を加えていくとよろしいかと思います。(花火大会によっては一発目にいきなり見せ場となる場合もあるので要注意)
3way雲台をお使いの方でカメラのアングルが不足する場合には、パン棒を逆方向にするのも一つの手です。

カメラが水平になるように調整する
特別な理由がない限り、カメラの水平はしっかりと保っておきましょう。
カメラの水平をしっかりと取ることで、違和感のない綺麗な花火写真へと近づけることにつながります。

カメラが水平になっていない状態で撮影をした場合、写真全体に違和感が生じてしまいます。

水平をあえて外す意図がないようであれば、カメラの水平はしっかりと取っておきましょう。
三脚の設置は足場が安定した場所を選ぶ
三脚を設置するにあたっては足場が安定した場所を選ぶようにしましょう。
足場が不安定な場所に三脚を設置してしまうと撮影時にブレが起こったり、転倒などによって機材が破損してしまうリスクが高まります。
参考までに避けたい場所としては以下のようなところが挙げられます。
- 板敷の席
- ビニールシートの上
- ぬかるんだ地面
- 砂の上
撮影時の安定性を確保するためにも、三脚を立てる場所の足場には十分に注意しましょう。
海上花火など会場が砂浜でどうしても避けられない場合には三脚の脚にビニール袋を巻き付けるなど、安定性を向上させるための対策を施すことをおすすめします。
ピント合わせは花火筒か付近のオブジェクトを活用する
ピントは花火の筒か付近のオブジェクトを軸に合わせるのが個人的におすすめです。

花火写真の撮影においてピント合わせはとても重要なポイントで、綺麗な光跡が残せるかどうかにつながってきます。
花火の筒が見える場合はそれを目標に、見えにくい場合は付近のオブジェクトを目標に合わせるのが良いでしょう。
明るいうちにセッティングを行う
可能であればセッティングは明るいうちに行うことをおすすめします。
暗い中でのセッティングをしようとするとピント合わせの難易度が高くなるなど、準備に手間取ってしまいます。
特に花火写真の撮影に慣れないうちは明るいうち現地入りし、時間をかけて落ち着いた状態でセッティングすることをおすすめします。
花火写真における構図の考え方
撮影場所とセットでどのような構図を取るかについても検討していきましょう。
構図を決めるにあたっては…
- 構図全体における花火の比率
- 縦構図と横構図の決め方
といった点がポイントになってきます。
どのような構図を取るかによって見る側に与える花火の印象が大きく変わってきますので、しっかりと考えていきたいところです。
構図全体における花火の比率
まずは写真の構図全体に対する花火の比率についてですが、これは写真を通じて伝える目的によって適宜使い分けるのがよろしいでしょう。
一例としては…
- 花火がメインの場合:花火の比率を大きくする
- 夜景がメインの場合:花火の比率を小さくする
といったところでしょうか。


写真全体の構図を考えるにあたっては花火を被写体のメインとするか否かで考えると、答えが出しやすいかと思います。
縦構図と横構図の決め方
花火写真の構図としては大きく縦構図と横構図の決め方も、比率と同じく写真を通じて伝える目的によって適宜使い分けるのがベターです。
特に花火をメインの被写体に据える場合においては…
- 花火の高さが幅よりも大きい場合:縦構図
- 花火の幅が高さより大きい場合:横構図
を基準に考えると、写真全体のバランスと花火の特徴がより伝わりやすくなります。(夜景がメインとなる場合は、夜景側に合わせて縦構図or横構図を考えてください)


縦構図と横構図を考えるにあたっては花火の打ち上がる高さと幅、主題と副題の関係を総合的に考えた上で決めていきましょう。
花火写真の撮影におけるカメラの設定

続いてはカメラの設定ですが、ざっくりまとめると以下の通りとなります。
撮影モード | マニュアルモード(M)もしくはバルブモード(B) |
---|---|
シャッタースピード | バルブ(Bulb) |
ISO感度 | ベースISO感度(100~200程度) |
絞り(F値) | 花火により異なる |
ホワイトバランス | 花火により異なる |
フォーカス | マニュアルフォーカス(MF) |
長秒時ノイズ低減 | オフ |
手ぶれ補正 | オフ |
記録形式 | RAW(推奨) |
花火写真の撮影はいわゆる光跡の撮影で、花火が打ち上がってから消えるまでには一定の時間がかかるため長時間露光(スローシャッター)を使っての撮影となります。
しかしながら通常の都市夜景などを撮るときとは異なり、花火は打ち上がるタイミングがまちまちなため、綺麗に花火の光跡を収めるためにはシャッタースピードをバルブ(Bulb)と呼ばれる特殊な設定を施す必要があります。
また、花火は非常に明るい被写体ということでカメラに光をなるべく通さないようにするための設定も必要になってきます。
日中帯や都市夜景の写真撮影とはいくぶん異なった設定になりますが、ひとたび設定のポイントを押さえてしまえばどの花火でもおおよそ対応できますので、ぜひとも押さえておきたいところです。
撮影モード
撮影モードはマニュアルモード(M)もしくはバルブモード(B)に設定します。


花火写真の撮影ではカメラの露出(絞り、シャッタースピード、ISO感度)を手動で設定することになりますが、特にシャッタースピードについてはバルブ(Bulb)に設定する必要があります。
これらの設定を実現できる撮影モードはマニュアルモードもしくはバルブモードに限られてきます。
撮影モード別の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せて参考にしてみてください。
シャッタースピード
続いてシャッタースピードはバルブ(Bulb)に設定します。

バルブとはいわゆる「調整弁」のことで、カメラにおいては撮影者がシャッターの開け閉めを手動でコントロールすることにより入ってくる光の量を任意で調整できるようになります。
花火は打ち上がるタイミング、打ち上がってから消えるまでの長さがまちまちですが、シャッタースピードをバルブにすることによって撮影者が任意のタイミングでシャッターを開け閉めできるようになります。
シャッタースピードを固定にして撮影すると花火が中途半端な写り方をするなど、綺麗に撮影することができません。
花火を綺麗に撮影するためにはシャッタースピードをバルブに設定するということを押さえておきましょう。
撮影モードがバルブモード(B)の場合はシャッタースピードが自動的にバルブ(Bulb)となるため本設定は不要です。
ISO感度
ISO感度はベース感度(基準感度)に設定します。
ISO感度とはカメラの光に対する感度のことをいい、値が低いほどカメラが光に対して鈍感かつ低ノイズになり、高いほど敏感かつ高ノイズになります。
花火は非常に明るい被写体かつ長時間露光となるため、カメラに取り込む光の量(露出)を抑える必要がありますが、そのためには…
- シャッタースピード:速くする
- 絞り(F値):絞る(F値を大きくする)
- ISO感度:低くする
ことが求められます。
シャッタースピードについては長時間露光(バルブ)となるため、ISO感度と絞りを使って露出を押さえる必要があります。
このうちISO感度についてはベース感度に設定することで、カメラに入ってくる光の量を最大限まで抑えることができます。(花火撮影では三脚の利用が前提となるため、ISO感度についてはベースISO感度まで下げても手ブレの心配はありません)
カメラによっては拡張感度によってISO感度をさらに下げられる機種もありますが、画質に影響してくるため個人的にはあまりおすすめしません。
絞り(F値)
絞りについては花火の種類や打ち上げ方によって大きく異なります。
絞りとはレンズからカメラへの光の通しやすさのことをいい、一般的にF値(F: Focal)で表現されます。
絞りが大きい(F値が小さい)ほどレンズからカメラへ光が通しやすくなり、反対に小さい(F値が大きい)ほど通しにくくなります。
撮影モードのところでも述べたように、花火は非常に明るい被写体となる一方で、光跡を撮るために数秒~十数秒程度の長時間露光が必要となります。
花火は非常に明るい被写体ではありますが、
そのため、先述のISO感度と合わせて絞りを絞る(F値を大きくする)ことで光を取り込む量を抑える必要があります。
花火の明るさは単打ちとスターマイン、色合いなどで大きく異なりますが、目安としては以下の通りとなります。
花火の種類・色合い | 絞り(F値) |
---|---|
和火 | F2.8~4.0 |
青色の花火 | F5.6~8.0 |
紅色の花火 | F8.0~13 |
中間色(パステルカラー)の花火 | F11~16 |
銀冠菊 | F11~16 |
雷 | F20~27 |
和火や青色系の暗めの花火では絞りを開放気味に、中間色(パステルカラー)や白色系の花火では絞りを絞るようにしましょう。
花火の種類がイマイチよく分からないという方は、個人的には以下を目安にするとよろしいかなと思います。(NDフィルターを使用しない場合)
- 単打ち:F4.0~8.0程度
- スターマイン:F11~16程度
なお、絞りを絞りすぎると回折現象によって画質が落ちるため、気になる方はNDフィルターを併用した上で絞りを少し開放(1~2段程度)することをおすすめします。
ホワイトバランス
花火写真の撮影において悩ましいのがホワイトバランスの設定ですが、打ち上がる花火によって大きく異なります。
ホワイトバランスは白を白く写すための機能で、一般的に色温度(K:ケルビン)で表現されます。
目安としては以下の通りとなります。
花火の種類・色合い | ホワイトバランス |
---|---|
和火 | 晴天(太陽光) |
青色の花火 | 電球 |
紅色の花火 | 電球 |
中間色(パステルカラー)の花火 | 電球 |
銀冠菊 | 電球 |
雷 | 電球 |
すごーくざっくりいえば和火は高めの色温度でそれ以外は低めの色温度に設定すると、おおむね自然な色合いが出やすくなります。
ホワイトバランスを適切に設定することで、写真の上で花火の色をしっかりと出すことができるようになります。
花火は色の変化が大きいかつ撮影中は設定が簡単に動かせないため、しっかりと花火の色味を追い込むのであればレタッチは必須になります。(レタッチについては第4回 レタッチのコツをご覧ください)
ただし、レタッチを前提とする場合でもある程度の追い込みをすることを個人的におすすめします。
フォーカス
撮影時には必ずマニュアルフォーカス(MF)に切り替えておきましょう。
その理由としては…
- 厳密なピント合わせができる
- 撮影中の不意なピント移動を防ぐ
という点が挙げられます。
ピント合わせについては明るい時間帯にオートフォーカス(AF)を使って行うという手もありますが、厳密に合わせるのであればMFでの調整が個人的におすすめです。
デジタルカメラをお使いの方でMFによるピント合わせが苦手だという方は、ライブビューを併用すると幾分合わせやすくなります。
特に気をつけていただきたいのが撮影時で、AFのまま撮影するとシャッターを切る手前でフォーカスが動いてしまい、肝心なタイミングでシャッターが切れなかったり、ピントがずれて花火の線が綺麗に出なくなってしまいます。
撮影中の無用なトラブルを避けるためにもMFに切り替えるのを必ず忘れないようにしましょう。
長秒時ノイズ低減
花火写真を撮影する際は長秒時ノイズ低減を忘れずにオフにするようにしましょう。
長秒時ノイズ低減とはシャッタースピードが長い写真に対してノイズ低減を行うための画像処理機能で…
- 長時間露光で撮影した写真1枚ごとに処理が行われる
- 処理には数秒~十数秒程度要する
- 処理が行われている間はシャッターが切れない
という特徴があります。
長時間露光が前提となる花火写真では一見ありがたい機能に思えるかもしれませんが、次々に打ち上がる花火に対してテンポよくシャッターが切れなくなるため、花火写真の撮影とは非常に相性の悪いという欠点があります。
貴重なシャッターを逃さないためにも、長秒時ノイズ低減の切り忘れには注意しましょう。
手ぶれ補正
花火写真の撮影においては手ぶれ補正をオフにしておきましょう。
手ぶれ補正をオンのまま撮影してしまうと微妙なブレが生じてしまう可能性があるというのが大きな理由です。
実は手ぶれ補正機能で効果があるのは手持ち撮影で起こるような低周波のブレのみで、三脚などに伝わる高周波のブレは正しく拾えないかつ補正できないという特徴があります。
三脚の利用が前提となる花火写真の撮影では逆効果となってしまうため、忘れずにオフにしておきましょう。
実際のところ、たいていのカメラではシャッタースピードをバルブにすると自動的に手ぶれ補正がオフになるようですが、念のため確認しておきましょう。
記録形式
記録形式については個人的にはRAW(+JPEG)がおすすめです。
デジタル一眼カメラにおける記録形式には大きく以下の2種類があります。
- JPEG
- RAW
両者の大きな違いとして、編集を行った際の画質の劣化が起こるか否かが挙げられます。
JPEG形式の写真データに対してレタッチを施した場合は画質が劣化してしまう上、一度編集してしまうと元の明るさや色合いに戻すことができないという特性があります。(このような特性を非可逆圧縮ともいいます)
撮影後にレタッチを施す場合には、RAWで記録することを強くおすすめします。(特にレタッチを施さない場合はJPEGでも構いません)
まとめ
今回は花火写真の撮影におけるカメラの基本的な設定について紹介してまいりました。
ざっくりとまとめると、以下の通りとなります。
- 花火の打ち上がる場所を基にセッティングを行う(三脚の高さには要注意)
- 構図は撮影の目的や花火の高さや打ち上げ幅に応じて縦横を決める
- カメラの設定はシャッタースピードはバルブにしつつ、絞りやISO感度は光を通しにくくする設定を施す
最初はちょっと取っ付きにくいかもしれませんが、いったん設定を押さえてしまえばおおよそどんな花火でも対応できますので、ぜひマスターしておきましょう。
第3回では撮影のコツと主な失敗例について紹介していきます。
- 第1回 撮影の準備
- 第2回 カメラの設定(本記事)
- 第3回 撮影のコツと失敗例
- 第4回 レタッチのコツ